Google Workspace のコアサービスである「Gemini」。
この Gemini アプリでは「Gem」と呼ばれる Gemini のカスタマイズバージョンを利用することができます。
例えば、Gemを利用して指示を覚えさえておけば、長いプロンプトは不要で「レビューして」の一言で、規約チェックなどの自動化をすることも可能です。
本記事では、 Gem のカスタマイズ方法から実際の業務での活用方法までをご紹介します。
通常の Gemini アプリだけでなく、 Gem を活用してさらなる業務の効率化をするにはどうすればいいのか、本記事が参考になると幸いです。
【目次】
そもそも Gem とは?
Gem を利用するメリット
Gem の作成・カスタマイズ方法
Gem を用いた業務での活用方法
人事部編
採用面談の内容策定
営業部編
新規顧客企業情報収集
番外編
翻訳チェッカー
NotebookLMとの違いについて
まとめ: Gem を活用して業務をさらに効率化!
そもそも Gem とは?
まず初めに Gem がどのようなサービスなのかをご紹介します。
「Gem(ジェム)」とは Gemini アプリ上で自分専用にカスタマイズできるチャットボットのような機能です。Gem を利用することのメリットについては以下の通りです。
Gem を利用するメリット
Gem を利用することで、次のようなことが可能になります。
-
自分好みに Gemini をカスタマイズすることができる
どのような立場での回答が欲しいか、どのレベルでの回答が欲しいかを事前に設定することなどができます。
-
繰り返し同じ操作を行うときに便利
決まった操作を不定期に複数回行うような場合、作成済みの Gem を呼び出すだけで毎回、同じような形式で情報を取得する・文章を作成する、といった操作が行えます。通常の Gemini の 場合は毎回詳細に指示が必要ですが、Gem により指示を簡略化することで作業時間の短縮が期待できます。
本記事では実際にどのようなときに Gem が活用できるかについて、ユースケースを用いてご説明します。
Gem の作成・カスタマイズ方法
Gem の活用方法の前にまずは Gem の作成方法・カスタマイズ方法についてご説明します。
- Gemini アプリを開き、「Gem を表示」をクリックします。
- Gem マネージャー画面に遷移後、「+Gem を作成」をクリックします。
-
各欄に必要事項を入力し、「保存」をクリックして準備は完了です。
◆名前
-Gem の名前を入力します◆カスタム指示
-どのような回答を求めるか入力します
-🖊アイコンをクリックすることで、指示文を Gemini が作成サポートすることも可能です◆知識
-Gem が参照するファイルを追加します※省略可◆プレビュー
-実際に Gem を動かした場合の動作確認を行います
-
Gem の保存後は、Gem マネージャー画面の「作成した Gem 」に一覧として表示され、クリックすることでチャット画面が開きプロンプトへの入力が可能となります。
【作成した Gem を開いた画面】
Gem を用いた業務での活用方法
続いて Gem を利用することでさらに業務効率化を目指せるような利活用方法について、具体的なプロンプトも交えてご紹介いたします。
※本記事に登場する人物や企業について、実在の人物・企業とは一切関係ありません
今回は以下の業務を想定した Gem を作成いたします。
-
人事部編
採用面談の内容策定 -
営業部編
新規顧客企業情報収集 -
番外編:
翻訳チェッカー
人事部業務を想定した活用方法
採用面談の内容策定
まずは人事部での活用方法についてご紹介いたします。
業務フロー:
採用面談の応募者への質問事項の洗い出しの際、以下の作業が発生すると仮定します。
- 会社に適応する人材であるかを履歴書からチェックする
- 履歴書から判断できない内容について、以下の観点で質問票を作成する
- どういった質問をすれば企業に適切な人物であると判断できるか
- どういった質問をすればその人の本質を見抜けるか
<実現したいこと>
業務を効率化するために、実現したいことを書き出します。
- 面談者の名前を入力することで、複数アップロードされた <履歴書> の中から対象者を絞り込み、該当の履歴書を参照する
- 参照した履歴書がソース情報として表示されるようにする
- 履歴書から判断できない内容について、質問すべき内容を10個用意する。質問すべき内容については、以下の観点で作成すること。
- どういった質問をすれば <会社概要> に適切な人物であると判断できるか
- どういった質問をすればその人の本質を見抜けるか
<下準備>
Gem の作成にあたり、参照すべき情報を用意します。
1.履歴書を3つ用意
2.採用側の企業情報を用意
Gem の作成:
- Gem の名前に「採用面談の内容策定」と入力します
-
カスタム指示に <実現したいこと> を入力します
以下、指示内容
・ 面談者の名前を入力することで、複数アップロードの <履歴書> の中から対象者を絞り込み、該当の履歴書を参照する ・ 参照した履歴書がソース情報として表示されるようにする
・ 履歴書から判断できない内容について、質問すべき内容を10個用意する。
質問すべき内容については、以下の観点で作成すること。
― どういった質問をすれば <会社概要> に適切な人物であると判断できるか
― どういった質問をすればその人の本質を見抜けるか
-
知識に <履歴書> と <会社概要> をアップロードします
※アップロード可能なファイルは10個までとなります。
※Google Workspace の Gemini は、プロンプトに入力した内容や生成された回答を、
他のユーザーや他の組織と共有することはございません。詳細はこちら
-
保存をクリックします
※実際に作成される際はプレビュー画面で動作確認を行ってください - 作成された Gem を開き、面談者の名前を送信します
- 結果が表示されます
得られた結果は以下の通りです:
◆会社概要のリンク
リンクを開くと、アップロードした会社概要を参照していることが分かります
◆面談者のリンク
リンクを開くと、指定した面談者の履歴書を参照していることが分かります
◆本質を見抜く10の質問
質問10個、履歴書と会社概要に照らし合わせた内容で回答を得ることができました。
◇(一部抜粋)「TaskBridge(タスク管理プラットフォーム)」のような自社 SaaS 製品の提供に、営業としてどのように貢献したいと考えていますか? 具体的なアイデアがあればお聞かせください。
◇(一部抜粋)当社の主要取引先には、大手企業だけでなく、官公庁、大学、医療機関など多岐にわたる顧客 がありますが、多様な顧客層に対してどのようにアプローチし、信頼関係を構築していきますか?
Gemini であれば毎回明示的に指定しなければならないソース情報や欲しい回答なども、Gem を利用することで指示を省略することができ、かつ決まった形で回答を得ることができます。
また Gem は対話型であるため、「質問を5個増やして」「趣味についても質問して」など追加要求をすることで、内容の修正も可能です。
営業部業務を想定した活用方法
新規顧客企業情報収集
次に営業部での活用方法についてご紹介いたします。
業務フロー:
新規顧客企業情報収集の際、以下の情報を収集したいと仮定します。
1.会社概要
2.財務状況
3.反社チェック
4.過去不祥事
<実現したいこと>
業務を効率化するために、実現したいことを書き出します。
1.会社概要:会社概要を3行でまとめる
2.財務状況:過去5年間の財務状況を回答
3.反社チェック:反社会勢力との繋がりがないか情報収集
4.過去不祥事:過去に不祥事が起きていないか情報収集
Gem の作成:
- Gem の名前に「新規顧客企業情報」と入力します
-
カスタム指示に <実現したいこと> を入力します
以下、指示内容
・ 入力した会社名に関し回答すること
・ 体言止めで回答すること ←口調の指示
・ 会社概要:会社概要を3行でまとめ、会社概要ページのリンクも記載すること
・ 財務状況:過去5年間の財務状況を回答し、参照元のリンクを記載すること
・ 反社チェック:反社会勢力との繋がりがないか情報収集
・ 過去不祥事:過去に不祥事が起きていないか情報収集
- 保存をクリックします
※実際に作成される際はプレビュー画面で動作確認を行ってください
- 作成された Gem を開き、情報を取得したい会社の社名を送信します
- 結果が表示されます
得られた結果は以下の通りです:
◆入力した会社名に関し回答すること/体言止めで回答すること
◇入力した会社について回答している
◇Gemini のデフォルトの敬語ではなく、体言止めで回答されている
◆会社概要:会社概要を3行でまとめ、会社概要ページのリンクも記載すること
3行でまとまっており、会社概要のリンクページも記載されている
◆財務状況/反社チェック/過去不祥事
それぞれに対し検索結果が表示されている
Gem を活用することでキーワードを入力するだけで複数のウェブページを開いて検索する手間なく、効率的に情報収集が行えます。また口調についての指示も可能です。
番外編
翻訳チェッカー
最後に多言語でメール文を作成する際に活用できる Gem をご紹介します。
今回はカスタム指示を Gemini にサポートしてもらいます。
<実現したいこと>
1.日本語でメール文を入力
2.英語に翻訳する
3.最後に逆翻訳して、翻訳の過程で意味が変わっていないかチェック
Gem の作成:
- Gem の名前に「翻訳チェッカー」と入力します
-
カスタム指示に <実現したいこと> を入力し、「🖊マーク(Gemini を使用して指示を書き換える)」をクリックします
以下、書き換え前の指示内容
・ 日本語でメール文を入力
・ 英語に翻訳する
・ 最後に逆翻訳して、翻訳の過程で意味が変わっていないかチェック - [2.]で入力した指示内容が以下のように書き換わり、より明確な指示になりました。
書き換え後の内容が意図した指示になっていることを確認します。
カスタム指示全文(書き換え後)
目的と目標:
* ユーザーが入力した日本語のメールを正確な英語に翻訳します。
* 翻訳された英語のメールを日本語に逆翻訳し、元の意味が保持されているか確認します。
* 翻訳の過程で意味が変わった点があれば、具体的に指摘し、修正案を提示します。
* ユーザーが自然で正確なビジネスメールを作成できるようにサポートします。
行動とルール:
1) 初期問い合わせ:
a) ユーザーからの日本語メールの入力を待ちます。
b) メールが入力されたら、翻訳を開始する前に、そのメールの目的や文脈
(例:ビジネス、カジュアル、謝罪、依頼など)を尋ねて、より適切な翻訳ができるように
します。
2) 翻訳プロセス:
a) 入力された日本語メールを、自然で適切な英語に翻訳します。
ビジネスメールの場合、丁寧でプロフェッショナルな表現を使用します。
b) 翻訳が完了したら、その英語翻訳をユーザーに提示します。
c) 提示した英語翻訳を日本語に逆翻訳します。
この逆翻訳は、元の日本語とどれだけ意味が一致しているかを確認するためのものです。
3) 翻訳チェックとフィードバック:
a) 元の日本語、英語翻訳、逆翻訳の3つを比較し、翻訳の過程で意味の変化、ニュアンスの
喪失、または誤訳がないか確認します。
b) 意味の変化や誤訳が見つかった場合は、具体的にどの部分がどのように変化したのかを
ユーザーに明確に説明します。
c) 改善のための具体的な修正案を提示し、ユーザーがより良い翻訳を作成できるように支援
します。
d) ユーザーが質問や疑問を持っている場合は、それらに丁寧に答えます。
全体的なトーン:
* プロフェッショナルで、丁寧な言葉遣いを心がけます。
* 明確で分かりやすい表現を使用します。
* ユーザーの質問や疑問に対して、忍耐強く、親身に対応します。
* 信頼できる翻訳アシスタントとしての役割を果たします。
- 保存をクリックします
※実際に作成される際はプレビュー画面で動作確認を行ってください
- 作成された Gem を開き、日本語でメール文を送信します
- Gem からのメールの目的に対する質問に回答します(今回はビジネスパートナーと回答しましたが、送信相手はカスタム指示で事前に設定することも可能です)
得られた結果は以下の通りです:
◆英語翻訳
問題なく翻訳されました
◆逆翻訳
逆翻訳をしても、英語への翻訳の過程で意味が変わっていないことを確認できました
◆翻訳の比較と修正案
使用した語句のニュアンス等まで解説してくれます
カスタム指示を Gemini にサポートしてもらうことで、複雑な指示も一瞬で作成することが可能です。まずは実現したいことを列挙し、Gemini に カスタム指示を作成してもらいましょう。
NotebookLMとの違いについて
常に同じ情報源を参照できるなどの機能を持つサービスとして、Google では「NotebookLM」というAI アシスタントも提供しています。
類似の機能を持つ「NotebookLM」と「Gem」ですが、それぞれのサービスには以下のような特徴がございます。
項目 | NotebookLM | Gem |
主な用途 | 資料分析・情報整理 | 目的特化型の会話エージェント構築 |
対話の個性 | ドキュメント中心(Q&A型) | エージェント型(例:「あなたは営業アシスタントです」など) |
想定シーン | リサーチ・資料整理・社内マニュアル分析 | サポートボット・議事録作成・業務補助など |
得意なこと | 大量のドキュメントの効率的な処理、事実に基づいた回答、引用元の明示、専門的な分析 | 幅広いトピックに関する柔軟な対話、創造的なテキスト生成、様々な形式での情報提供 (テキスト、画像など) |
メンバーとの共有 |
可 |
不可 |
利点 | メンバー間で同じ回答を得たい(回答のブレを減らしたい)場合に有効 | アイデア出しや画像生成など、創造的な回答を得たい場合に有効 |
※参考資料:【NotebookLM Plus】どうやって使う?基本的な使い方をご紹介
まとめ: Gem を活用して業務をさらに効率化!
本記事では、 Gem の作成方法から活用方法までご紹介させていただきました。
業務を劇的に効率化する Gemini 、それをさらにパワーアップさせることができる Gem 。
Gemini の利用に留まらず、ぜひ Gem についても取り入れてみてください。
弊社では、 Gemini ・ Gem を含む Google Workspace 全般の導入・運用サポートをご提供しております。
その中のクラウド運用サポートでは、クラウド導入後のお客様のお悩みをエンジニアがサポートさせていただきます。
Gemini ・ Gem 活用をご検討中の企業様は、ぜひ弊社にお任せください。
【参考情報】
Gemini アプリで Gem の使用を開始する - Gemini アプリ ヘルプ
Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ
※本記事の情報およびスライド内の画像は 2025/06/12 時点での仕様のものです。
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